大判例

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山口地方裁判所 昭和29年(行モ)2号 決定

申請人 百瀬寿之 外一名

被申請人 厚北公立船木病院組合組合長

一、主  文

被申請人が、昭和二十九年十月二十日付をもつて申請人百瀬寿之に対し、同年同月十八日付をもつて申請人松尾道子に対し、なした各免職処分の効力を停止する。

二、理  由

申請人両名代理人は主文同旨の裁判を求め、その理由とするところは、「厚北公立船木病院組合は山口県厚狭郡北部五ケ町村(船木町、万倉村、吉部村、厚東村、二俣瀬村)の病院経営及び医療事務を共同処理するために設けられた地方公共団体の組合(一部事務組合)であつて、被申請人は右病院組合の組合長である。申請人百瀬寿之は右病院組合の経営にかゝる厚北公立船木病院に奉職する外科医師、申請人松尾道子は同病院に奉職する看護婦長でいづれも地方公務員であるが、被申請人は同病院組合の当初予算が減少されたとの理由で地方公務員法第二十八条第一項第四号により昭和二十九年十月十八日付で申請人松尾道子を、次で同じ理由により同月二十日付で申請人百瀬寿之をそれぞれ免職処分に付した。然し乍ら特別地方公共団体である厚北公立船木病院組合が定員の削減、予算の減少をなすには同組合の議会の議決を要するものであるのに右病院組合議会は定員の削減乃至予算の減少について何らの議決をなしておらない。又右病院の医師、看護婦の定数は医療法並に附属法令によつて定めらるべき性質のもので、現在同病院において定数以上の医師、看護婦の過員は存しないからこれを減員することは許されないものである。従つて被申請人が地方公務員法第二十八条第一項第四号を理由に免職処分をしても該処分は当然無効である。そこで申請人等は山口地方裁判所に右免職処分の無効確認の訴を提起した(同庁昭和二十九年(行)第一八号)が申請人等が離職して医師及び看護婦が現状以下の人員となるにおいては現医師、看護婦の人員を以ても十分でない右病院における施療は到底維持できなくなること明かであり、一方申請人等は該免職により生計の途を絶たれることとなるは言うまでもなく、これに加うるに申請人百瀬寿之は目下進捗中の学位論文の研究は不能となり、更に現在話合のある縁談も破談とならざるを得ず、その他信用を基礎とする医師にあつて右の不法の処分によつて蒙る精神的損害は測り得べくもなく、申請人松尾道子は有夫有子の身であるが複雑な家庭事情のもつれから止むを得ず夫と話合の上別居し、看護婦を天職とし自力で子供を養育通学させ、辛じて生活への希望を保ち得ているのに、免職による収入の杜絶は右の如くしてやつと継続している夫婦親子関係を破壊させ、夫の一族から離婚を追られること必至で子供は片親を失はざるを得ない事情にあるので、本案判決の確定まで右免職処分の効力が存続するにおいては、申請人等は何れも現在及び将来において回復しがたい損害を蒙ることとなるから右処分の効力の停止を求めるため本件申請に及ぶ次第である」と言うにある。

当裁判所は、当事者の意見及び疏明資料に徴し申請人両名の本件申請は何れも理由あるものと認め、行政事件訴訟特例法第十条第二項に基いて主文の通り決定する。

(裁判官 河辺義一 藤田哲夫 野間礼二)

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